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【コラム】PMBOK第7版がタスク・マネジメントにもたらす意味とは?(1/3)

記事ID:3111

AIサマリー:
この記事では、PMBOK第7版がタスク・マネジメントにもたらす影響について説明しています。新しいパフォーマンス・ドメインと開発アプローチ、ライフサイクルの重要性が強調され、複合的な計画視点の必要性が述べられています。また、タスク・マネジメントの導入に際し、バリューデリバリー・システムの概念を理解し、業界や契約形態にかかわらず価値創出を目指す重要性が強調されています。

PMBOKとPMBOK第7版

PMBOKとはProject Management Body of Knowledgeを略したものであり、日本語では、「プロジェクト・マネジメント知識体系ガイド」と言います。PMBOKは、プロジェクト・マネジメント協会 (PMI) が発行しているガイドであり、幅広い分野でのマネジメントに適用されるプロジェクト・マネジメントの基盤を提供しています。


この記事の著者(依田)も、コンサルティングや講演など、いろいろな場面で、これを参照して役立ててきました。プロジェクト・マネジメントにかかわりのある読者であれば、一度はこの名称を耳にしたことがあると思います。また、ガイドを購入し、PMIの講座に出席するなどしてPMBOKについて勉強した人も多いのではないでしょうか。


そのPMBOKが、今年大きく改訂されて第7版となりました。
第7版について調べてみると、これが従来のレベルとはことなる大きな改定であり、当VisiWorkサイトのテーマであるタスク・マネジメントの考え方にも影響があり、その活用を考える上でも大いに参考になると考え、その紹介を3部の記事に分けて書いてみることにしました。


なお、この第7版の状況ですが、PMI日本支部のホームページの2021年07月14日の記事は、米国PMIでは8月1日にリリース、日本語版の書籍リリースは2021年11月と発表しています。
(なお、この3部構成の記事では、PMBOK第7版に記載されている英語の用語を著者が日本語訳しています。正式の日本語訳については、正式日本語版を参照していただきたいと思います)

第7版の変更は大きい

第7版を調べてみてわかったのは、その変化が単に変更箇所が多いというものではなく、まずは大きく構造的に変化しているということです。
ひとつ前の版である第6版は10個の知識エリアと5個のプロジェクトマネジメント・プロセス群、それぞれを縦軸と横軸とする枠組みによって構成されています。その縦軸と横軸は以下の通りです。また、この枠組みは、第6版以前の版においても大きく異なるものではありません:

縦軸

  • プロジェクト統合マネジメント
  • プロジェクト・スコープ・マネジメント
  • プロジェクト・スケジュール・マネジメント
  • プロジェクト・コスト・マネジメント
  • プロジェクト・品質・マネジメント
  • プロジェクト・資源・マネジメント
  • プロジェクト・コミュニケーション・マネジメント
  • プロジェクト・リスク・マネジメント
  • プロジェクト・調達・マネジメント
  • プロジェクト・ステークホルダー・マネジメント

横軸

  • 立ち上げプロセス群
  • 計画プロセス群
  • 実行プロセス群
  • 監視・コントロール・プロセス群
  • 終結プロセス群

この枠組みに、具体的なプロジェクト・マネジメントのためのさまざまな具体的プロセスが配置されて、PMBOK体系が構成されています。
では、このような形で、第7版を概観することができるかというとそれはもはやできません。なぜなら根本的に枠組み自体が変化しているからです。これについては後述します。
では、この構造的変化をもたらした根本的な考え方の変化とは何かというと、それはプロセス指向から、価値指向・システム指向(思考)への転換であると言えます。
その変化の経緯を知るために、序文(Preface)を見てみましょう。以下では、その一部を簡略に引用します:

  • PMBOKの改訂から改訂の間に、時代は大きく変わった
    • 組織
    • 技術
    • 従業員
  • そんな中でも、変わらず基本的な考え方は残り、総合的な思考は全体を理解するために役立ち、組織が、プロジェクトを固有の結果や成果を実現するための手段と考えていることに変わりはない
  • PMIは幅広いステークホルダーとかかわりを持ち、そこからのフィードバックやインプットとして4つのキーポイントが浮かび上がった。
    • PMBOKの信頼性と妥当性を維持する
    • 新しい内容を詰め込むのではなく、PMBOKガイドの読みやすさと使いやすさを改善する
    • ステークホルダーが持つ情報と内容についてのニーズを理解し、実用的な使い道をサポートする精査された補足的内容を提供する
    • これまでの版の構造と内容には一部のステークホルダーにとって継続的な価値があることを認識し、その価値を否定することなく、すべての変化がその価値を強化するようにする

これらのキーポイントの中にPMBOKのある意味で謙虚な反省を筆者は感じます。PMBOKは、冒頭で書いたように、プロジェクト・マネジメントに必要な知識や概念をバランス良く与えてくれる一方で、ここまでやるのかと言いたくなるような冗長性が感じられたのは筆者だけではないでしょう。おそらくPMIによるステークホルダーへの調査・聞き取りでは、かなり辛辣な意見も出たのではないかと想像します。


しかし、それらを改善の手がかりに、今回の第7版のような大幅な変化を成し遂げるPMIのパワーに敬服する思いです。
序文では、このあとに、これまでのPMBOKの主要な改訂が3回あったことが説明されています。3回とは、1996年、2004年(第3版)、2017年(第6版)です。特筆しておきたいのは、このうちの2017年の第6版の改訂です。この版で、始めて「アジャイル」に関する記述が本編に取り入れられました。アジャイル開発や適用型開発に関して拡張が行われたのです。


筆者は、当時この第6版を入手して、PMBOKの中に「アジャイル」が登場したのに気づき、時代の変化を感じたものですが、一方で、PMBOKに今後どうやってアジャイルを取り込むのだろうと考えこんでしまった記憶があります。おそらく第6版あたりで、PMBOKの本質的変化がさけられなくなり、今回の第7版につながったのでしょう。

序文では、主要な変更点の説明が続きます:

  • プロセスベースの標準は、有効であるが、プロジェクト・マネジメントはかつてないほど急速に変化しているため、これまでのプロセスベースの方向性をもはや維持できなくなった。
  • このままでは、完全な価値提供(バリューデリバリー)の状況を反映できない。
  • つまり、完全なバリューデリバリーへの道筋を取り込むことができない。そのために、主要な変化が起きたのである。

主要な変化の一つは、プロジェクト・マネジメントの原則(Principle)に関するステートメント(声明)を選び出し、それら一群の原則ステートメントがプロジェクト管理全体に適用されるという考え方を採用したことです。こうすることで、プロジェクト・チームには業務遂行における幅広いパラメータ(裁量の余地)が示されることになり、また、原則の意図から外れていない限り、多くの選択肢が与えられることになります。


もう一つの変化は、プロジェクト・マネジメントを、価値を実現するためのより大きなシステムの一部であるとみなすということです。こうすることで、プロジェクト自体に着目するだけでなく、組織が全体として持つ様々な要素や、その環境をも視野に入れ、必要に応じてそれらを改善するといったことも可能になります。
PMBOK第7版は、以下の2編から構成されています。

  1. プロジェクト・マネジメント標準(STANDARD FOR PROJECT MANAGEMENT)
  2. プロジェクト・マネジメント知識体系ガイド(A GUIDE TO THE PROJECT MANAGEMENT BODY OF KNOWLEDGE)です。

続く、(2/3)では、これら2編の章立てを見て、PMBOKの全容を確認してみましょう。

PMBOK第7版がタスク・マネジメントにもたらす意味とは?(1/3)
PMBOK第7版がタスク・マネジメントにもたらす意味とは?(2/3)
PMBOK第7版がタスク・マネジメントにもたらす意味とは?(3/3)

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