記事ID:2542
分野:地方自治体業務、行政システム、給付金支給
専門性:中
AIサマリー:
この記事では、特別定額給付金の支給プロセスをRedmineを使って管理するアイデアについて紹介しています。シナジー研究所が関東圏の地方自治体と意見交換を行い、住民基本台帳を元にRedmineでワークフローを構築し、迅速な給付金支給を実現する方法を検討しました。意見交換では、マイナンバーカードとのデータ突合や、情報リテラシーの差異への対応などの課題も浮き彫りになりました。
国民一人10万円の特別定額給付金の支給が始まり、給付が迅速に行われないという問題が発生しました。新型コロナ感染症については現時点で終息の気配はなく、今後、同様な事態が発生したときに同じ状況に陥らないという保証はありません。
給付金支給に限らず、なんらかの行政サービスが突発的に必要となった場合、そのために必要なITシステムを一から開発したのでは迅速なサービスを行うことはできません。
良く知られているように、ITシステムの開発には、要件定義、設計、開発、テストなど、きちんとした品質を実現するためのいくつかの工程が存在し、すべての工程を通過させるのに1年以上の期間が必要になることは珍しくありません。
このような時に、タスク管理ツール、特にREDMINEは、非常に有効なツールであると私たちは考えています。行政サービスの実施は多くの場合ワークフローを伴うと考えられますが、REDMINEはタスク管理ツールの中でも、ワークフロー機能を有するツールです。
REDMINEは非常に柔軟で、ワークフロー機能もある種の汎用性を持っていますから、個別業務に特化した専用ツールと比べて多少の不効率は避けられないかもしれません。しかし、そこを受容できるのであれば、突発的な行政サービスの迅速な立ち上げと実施において、大きな効率性をもたらすはずです。
以上のように考えた私たちは、本年夏に、関東圏のある地方自治体の有志と意見交換を行いました。この記事では、その意見交換のあらましと、私たちの得た感触について書いてみます。
私たちの提案(仮説)
私たちの提案とは、下図のようなものです。
住民に対する給付金支給においては、まず住民基本台帳が入力となるでしょう。その世帯主一人一人について確認してはがきを送付。受領したはがきに対して銀行口座を付与して振込データを作成すれば、給付金支給が可能と考えました。アイデアとは、この行政サービスをワークフローとして実現するためのツールとしてタスク管理ツール、つまりREDMINEを使ってはどうかということです。
意見交換を行った時期は、定額給付金支給の山が越してホッと一息というタイミングであったと思いますが、実際の流れとこの図は大きくずれてはいないようでした。
ディスカッション
いつくかフィードバックを得ました。
住民基本台帳からの流れとは別に、国が主導するマイナンバーカードを利用したピッタリサービスからの流れがもう一つあるとのこと。実は後者の方のデータの突合せで苦労をされたようです。特別定額給付金の支給にREDMINEをという我々のアイデアは、上記二つの流れがうまくサポートできれば実現可能性がありそうです。
また、さまざまな情報リテラシーの人をどうサポートするかということも課題となることがわかりました。確かに、REDMINEは汎用的が高く柔軟という意味で適用性は高いと思われますが、反面、専用に開発された行政システムと比べれば痒い所に手が届く、というわけには行きません。
それでも、私たちとしては、80:20の法則と言われるように、限られた手段で大方の流れをカバーすることができれば、残りは個別の対応を考えることが全体的な最適性につながると思うのですが、システム化で救済されない部分が残る提案を採用することは難しいだろうという意見をいただきました。「一割の例外を重要視する」という意見が印象的で、地方自治体サービスを実装する難しさはそのあたりにあるという認識を得ました。
今回は、定額給付金支給という行政サービスにREDMINEを利用するアイデアをディスカッションするのが目的でしたが、特定の行政サービスをサポートする代わりに、行政全体における業務の可視化に可能性があるのではという意見もいただきました。現状では、業務全体が可視化されておらず、したがって、正確な業務量の把握や、人員配置が適正であるかの評価が難しい状況にあるとのこと。行政全体の業務可視化というREDMINE、つまりタスク管理の使いみちが示唆されたことは今回の意見交換の大きな収穫となりました。
この記事に関する質問やご意見がありましたら、当サイトお問い合わせページまでお寄せください。